はじめに
受動態とは、動作の受け手が主語となる文の構造を指します。動作の主体は明示されません。能動態であれば「彼は問題を解決した」という文も、受動態なら「問題が彼によって解決された」となります。この例文からも分かるように、受動態は、文中で誰が何をしたのかではなく何が行われたのかを強調します。ただし必要以上に使用すると文意が不明瞭になり、読者にとって読み取りづらい文章になってしまいます。
受動態の過剰使用がもたらす曖昧さ
受動態を頻繁に使用した場合、文章の明確さが失われることがあります。特に、誰が行動の主体であるかが不明確になると、読者は文意を理解しづらくなります。例えば、「この問題は解決されました」と書かれている場合、誰が問題を解決したのかが分からないですよね。これは、責任の所在を曖昧にし、読者に疑問を抱かせる原因となります。
また、受動態を多用することで文章全体が回りくどくなり、冗長な印象を与えることもあります。能動態を使えば「私が問題を解決しました」と簡潔に表現できますが、受動態だと「問題は私によって解決されました」と持って回った表現になります。このような冗長性は、ビジネス文書などの実用文では、読み手に対する負担を増やす要因となります。
受動態が適切な場面もある
しかし、受動態には適切な使用場面もあります。その一つが、主語に焦点を当てず動作の結果に重点を置きたい場合です。例えば「この橋は1960年に建設された」という文では、誰が建設したのかよりも橋が建設されたという事実が重要です。このように、文脈によっては受動態が情報を効果的に伝える手段となります。
また、行動の主体を意図的に伏せたい場合にも受動態は有効です。例えば企業が製品に問題があった事実を認める際、「誤りがありましたが対策が講じられました」と表現することで、具体的な責任者を明確にしないまま問題の解決に焦点を当てることができます。
能動態と受動態のバランスを取る方法
受動態を避けて常に能動態を使用すべきというわけではありませんが、言いたいことを正確に伝えるには、能動態と受動態のバランスを取る必要があります。以下の方法で、文章の明確さを保ちながら適切に受動態を使用できます。
①能動態を基本とする
まず能動態を使用して文章をつくりましょう。この作業によって誰が何をしたかが明確になるので、そのあと文章を整えていくなかで受動態を取り入れるにしても、文意を損なわないように調節しやすくなります。
②受動態を必要に応じて使用する
文脈に応じて、受動態が適切な場合にのみ使用しましょう。特に、行動の主体が不明瞭であることが文意に影響を与えない場合や、結果に焦点を当てたい場合に受動態を選びます。
③文全体の流れを確認する
文章を見直す際に、受動態が過剰に使用されていないか確認します。必要であれば受動態を能動態に書き換えて、文章全体の流れをよりスムーズにします。
おわりに
受動態は特定の状況下で有用なツールですが、過剰に使用すると文章の明確さが失われ、意味が曖昧になるリスクがあります。能動態と受動態を適切に使い分けることで、読み手にとって理解しやすい文章を作成することが可能です。より効果的にメッセージを伝えるためには、能動態を基本としつつ、必要に応じて受動態を使用するバランスが求められます。