はじめに
新規顧客を獲得するためには、潜在顧客や見込み顧客に対してタッチポイントを効果的に設計し、さまざまな手法を使って自社商品の強みや価値を伝える必要があります。顧客の購買意欲を高めるためには、顧客との接触頻度の増加が必要です。今回は、新規顧客の獲得に役立つ戦略的なアプローチ法について解説します。
新規顧客の二つのアプローチ方法とは
新規顧客に対するアプローチは大別して以下の2種類に分かれます。
- プッシュ型
- プル型
プッシュ型とプル型はそれぞれ強みが異なり、組み合わせることでより高い集客効果を発揮します。それぞれのタイプごとのアプローチ法の特徴や強みをまとめました。
プッシュ型
プッシュ型とは、企業側から顧客に対してアプローチをかけるタイプの営業手法です。たとえば、ダイレクトメールの郵送や電話でのテレアポ、メールマガジンの送付などが該当します。企業側が発信するタイミングを選べるため、期間限定のキャンペーンや誕生日などの記念日クーポンなど時期を逃したくないお知らせに適しています。
プッシュ型の強みは、比較的短期間かつ低予算で成果をあげやすいことです。また、自社からアプローチをかけるため、発信先の顧客を限定できるというメリットもあるでしょう。
ただし、プッシュ型のアプローチはその分時間や労力などのコスト負担が大きいというデメリットもあります。
またテレアポや飛び込み営業などのプッシュ型のアプローチは営業色が強すぎると嫌う顧客も多いため、営業マンが疲弊しやすく、成果が出るかどうかも属人的なスキルに依存しがちです。
プル型
一方、プル型とは、見込み客層に向けて自社商品・サービスに関する情報を発信しながら、顧客サイドにその情報を見つけてもらうアプローチ法のことです。
プレスリリースの配信しやオウンドメディアの運営、SNSでの発信などが代表例といえるでしょう。
プル型の場合は、自社商品・サービスに興味を持っている層が情報を見るため、見込み顧客を自然と購買へと誘導できるというメリットがあります。営業色を感じさせないため、プル型の情報の方が信頼性できると判断する顧客も多数存在します。
一方、プル型の場合は顧客が情報を見つけてくれるまでは待ちの姿勢となるため、自社でコントロールがしづらいというデメリットがあります。プル型のアプローチは成果が出るまでに時間がかかるため、短期的な成果を求める場合は向いていません。
新規顧客と接点をつくる具体的な方法
新規顧客と接点を作る手法として、プッシュ型・プル型それぞれリアルやオンラインでさまざまな戦略を立てることができます。代表的な手法をいくつか具体的に紹介します。
セミナー
温度感の高い見込み顧客を集客し、そのあとの営業アプローチに繋げられるセミナーは、リアル・オンラインともに展開可能なアプローチ法です。顧客のリストを多く集めたい場合は、無料セミナーを開催し、セミナー後にメールなどで継続的にアプローチをしてもよいでしょう。セミナーでそのまま成約を目指すのであれば、有料セミナーのほうが効果的です。
展示会
自社の製品やサービスに関連した分野に関心のある参加者にアプローチしやすい手法として、展示会へのブース参加も新規顧客の集客に有効な手法です。最近ではオンラインの展示会も開催されており、参加ハードルが下がりました。とはいえ、展示会への出展費用は数10万~100万円程度かかることも多いため、費用対効果は十分に検討すべきでしょう。
メール
メールでのアプローチは単独ではそこまでの効果は期待できませんが、他の手法と組み合わせることで高い集客効果を発揮します。たとえば先述したセミナーの参加者や展示会でコンタクトした見込み顧客などにメールでアフターフォローを行うことで、その場では成約につながらなかった縁から案件獲得に繋げやすくなります。
SNS
SNSも新規顧客へのアプローチに有効な手法です。BtoB分野では使いにくいと感じる人もいるかもしれませんが、FacebookやInstagram、Twitterなどから案件獲得している営業マンも多数存在しています。
特にFacebookはビジネスユースの顧客が多く、ビジネス向けのFacebookページの運用も可能なため、活用している企業が多いようです。SNSの場合は、宣伝や広告というよりも、顧客とのコミュニケーションを重視した運用のほうが好感をもたれやすいため注意しましょう。
紹介
既存顧客からの紹介は、非常に強力な顧客獲得手法です。紹介からつながった縁は、ある程度の信頼値からアプローチできるため、成約の可能性が非常に高くなります。紹介が勝手に生じるケースは少ないため、ある程度関係性の深い既存顧客に対して、「他にお困りの部署やお知り合い会社があれば、紹介してほしい」と声掛けをしておくと、紹介の輪が広まりやすくなります。
飛び込み訪問
飛び込み営業は、営業マンの負担が多い反面、他の手法では得づらい顧客とのつながりを得ること出来ます。潜在顧客の中には、自社のニーズに気づいていないケースも多く、そのような場合は自分から情報検索も行わないでしょう。最近ではリモートワーク化した企業も多く、成功率は下がっていますが、未だに効果のある営業手法です。
キャンペーン
既存顧客に加えて、自社商品に関心を持ちつつも購入の決断にまでは至らない顧客の後押しができるのがキャンペーンです。期間限定の値引きや特典プレゼントなど、顧客にとってのメリットを用意し、訴求しましょう。キャンペーンのお知らせには、プッシュ型のダイレクトメールやメールマガジンなどが効果的です。
アプローチの準備と手順
どのようなアプローチ手法であれ、その成否を左右するのは事前準備です。それぞれのアプローチの確度を高めるために必要なリサーチやプランニングについて、具体的な手順をまとめました。
顧客のデータ収集
顧客に対するアプローチを行う際には、まず顧客をセグメントごとに分け、それぞれの層の購買傾向やニーズを分析してから、具体的な手法の選定に移りましょう。
たとえば、自社から離脱しかけている顧客やまだ関心が薄い見込み顧客に対しては、プッシュ型のアプローチを行い、定期的に接触を図りながら自社商品の価値を訴求していく必要があります。
一方、ある程度ファン化が進んだ顧客であれば、プル型の情報発信に対しても積極的に検索してくれる可能性が高いため、そういった顧客を巻き込みながら、情報の拡散を狙っていくことになるでしょう。
また、全ての顧客に対して均等なアプローチを実施するのは不可能です。どの顧客層にアプローチすればより多くの収益が見込めるか、RFM分析やデシル分析などを活用した顧客分析も行うとよいでしょう。
顧客のリスト作成
顧客のデータを集めたら、プッシュ型のアプローチを行う顧客をリスト化しましょう。どの顧客層へのアプローチを優先すべきか、合わせて優先順位の決定も行うとよいでしょう。
プル型のアプローチであっても、たとえば顧客からの問い合わせやサンプル請求などをもとにリスト化し、いつでもプッシュ型のアプローチで後追いできるように準備しておくべきです。
メールアドレスや住所など、顧客リストの情報が充実すればするほど、アプローチの選択肢が広がります。定期的にリストのブラッシュアップも心がけましょう。
アプローチのシナリオ作成
顧客に対するアプローチ法を決定する際、成約に至るまでのストーリーをあらかじめ想定した上で、シナリオを設定すると、アプローチの成約率を向上できます。たとえば、ステップメールを組むにしても、収集・分類した顧客データをもとに、顧客が求めている情報やニーズを把握し、ステップの内容や頻度、メールの先に容易すべき導線設計などを細かく決めていきます。
このシナリオは一度作成したら完了ではなく、顧客の反応を見ながら、改善・修正していくものです。顧客のセグメントごとにシナリオを練り、実行しながらPDCAサイクルを回していきましょう。
シナリオに合わせたコンテンツ作成
シナリオの設計ができた時点で、いよいよコンテンツ作成です。自社商品の機能を伝えるだけではなく、顧客に情緒的な価値や自己実現的な価値を提供できるよう、共感や興味関心を呼び起こす内容が理想的です。コンテンツの作成は時間もコストも掛かるため、できるだけ早期に準備を進めましょう。必要に応じて外注を検討することで、より生産効率を高めることができます。
施策の実行と分析
シナリオの制定とコンテンツ作成が終わったら、いよいよ施策を実行に移すタイミングです。シナリオ作成の段階でも述べたとおり、大切なのは顧客の反応を見ながらの改善・修正です。施策の効果をあらかじめ検証できるよう、達成すべきゴールは必ず数値を用いて設定しましょう。以下のSMARTの法則に則ったゴール設定をおすすめします。
- Specific(明確性) … 設定した目標は明確なものか
- Measurable(計量性) … 目標達成率や進捗度を測定可能か
- Assignable(割当設定) … 役割や権限を割り当てているか
- Realistic(実現可能性) … 現実的な目標を設定しているか
- Time-related(期限設定) … 目標達成に期限を設けているか
あとは改善を繰り返し、施策の精度をより高めていくだけです。
まとめ
新規顧客を集客するためのアプローチ法について、ポイントをまとめると以下のとおりです。
- 新規顧客の集客アプローチにはプッシュ型とプル型があり、それぞれを組み合わせて集客効率の向上を図るべきである
- 新規顧客の集客の具体的な手法は、セミナーや展示会、メールなどさまざまである。費用対効果を考えながら、複数の手法をかけあわせるとよい
- 新規顧客へのアプローチの成功は事前準備にかかっている。、あた施策が終わった後の振り返りと改善は必須である
今回の記事を参考に、ぜひ新規集客のアプローチ戦略を見直し、より効率的な集客を目指しましょう。