はじめに
マーケティングの戦略立案に非常に役立つフレームワーク。きちんと使いこなすためにはそれぞれの果たす役割や適した用途を理解しておく必要があります。今回はB to Bマーケティングで特に有用なフレームワークをピックアップしました。
- 基本戦略の立案
- アイデア抽出や課題整理
- ネット活用
それぞれの場面に応じたフレームワークの理解を深め、顧客への営業アプローチの効果をより高めていきましょう。
基本戦略の立案に役立つフレームワーク
B to Bマーケティングの戦略の基本は、自社と周辺環境を照らし合わせながら、無数にある戦術から最も目標達成に適した手段や方法を選択していくことです。ヒト、モノ、カネ、情報、時間、ブランドなどといった限られたリソースを効率よく分配し、活用していくためには、目的に合った優先順位付けが重要といえます。
- 戦況分析
- 目的 (達成すべきゴールは)
- 目標 (どんな顧客に?)
- 戦略 (どんな価値を?)
- 戦術 (どのように提供するのか?)
このうち、1~3を整理して、4を打ち立てていくフェーズで活用できるフレームワークを全部で13個紹介します。
PEST分析
PEST分析とは、以下の4要因を分析するためのフレームワークです。
- Politics(政治的要因)
- Economy(経済的要因)
- Society(社会的要因)
- Technology(技術的要因)
これらの要因を分析することで、自社を取り巻く外的要因のリスクをマクロ視点で整理できます。昨今でいえば、たとえば新型コロナウイルスの流行に伴うリモートワーク化は、対面接触が当たり前だった業界にとっては大きなリスクでした。社会的要因である感染症拡大と、技術的要因であるテレビ会議システムの普及の複合といえるでしょう。
外的環境は刻々と変化していきます。あらかじめフレームワークを用いて定期的に外的要因を分析しておくことで、自社だけでは管理しきれないリスクの対応策を練ることができます。
3C分析
3C分析とは、次の3つのCを分析するフレームワークです。
- Customer(市場・顧客)
- Company(自社)
- Competitor(競合他社)
を軸にした考え方です。たとえば市場・顧客にニーズがあり、かつ競合他社が持っていない自社の強みがあれば、その部分を積極的にアピールすべきでしょう。
自社を取り巻く環境を徹底的に調査することで、自社のポジションが分かり、強みと弱みを両方とも把握することができます。
B to Bマーケティングの場合は、顧客視点を軸に3C分析を行うと、顧客理解をより深めるツールとしても役立ちます。
4C分析
3C分析よりも顧客視点によりフォーカスしたフレームワークが、4C分析です。顧客から見た自社商品のメリットを具体的に整理したいときに役立ちます。4Cの内容は以下のとおりです。
- Customer Value(顧客価値)
- Cost(顧客にとっての経費)
- Convenience(利便性)
- Communication(顧客とのコミュニケーション)
たとえば商品の機能面では他社とほぼ同等であっても、ブランドイメージによる付加価値やキャンペーンなどによるお得感、そしてアフターサービスなどのコミュニケーション部分でメリットを増やせば、競合他社との差別化が可能です。
4C分析は自社の商品だけではなく、他社商品に対して行うのもおすすめです。顧客視点や競合他社の商品を深く知ることで、市場への理解が深まります。
SWOT分析
SWOT分析は、自社の強みと弱みを内的・外的の両方の環境から分析するためのフレームワークです。SWOTの頭文字は、それぞれ次のような内容を指しています。
- Strength(強み):内的な強み
- Weakness(弱み):内的な弱み
- Opportunity(機会):外的な強み
- Threat(脅威):外的な弱み
SWOT分析はよく3C分析と合わせて用いられます。3C分析で自社の立ち位置を把握してから、SWOT分析によって強みの活かし方や脅威への対策などを練っていくと、B to Bマーケティング戦略の土台である戦況分析に役立ちます。
PPM分析
PPM分析とは、Product Portfolio Management(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)の頭文字をとったフレームワークです。市場の成長率と相対的なマーケットシェアからマトリクス図を作り、自社商品を以下の4タイプのどれかに区分します。
- 花形(市場成長率もマーケットシェアも高い)
- 金のなる木(市場成長率は低いがマーケットシェアは高い)
- 問題児(市場成長率は高いがマーケットシェアは低い)
- 負け犬(市場成長率もマーケットシェアも低い)
基本的な考え方としては、「花形」に該当する商品から得られる収益を「金のなる木」の事業成長や「問題児」のシェア拡大に投資していきます。「負け犬」の事業は、事業縮小ないしは撤退を検討すべきでしょう。
このように、製品・サービスごとの商品展開やリソース配分を決める際に有効なフレームワークです。
5フォース分析
5フォース分析とは、以下の5つの要素(フォース)を分析し、競合他社についての外部状況を把握するためのフレームワークです。
- 既存競争者同士の敵対関係(同業他社)
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力(原材料などの仕入れ元の力)
- 買い手の競争力(顧客の力)
これらの要素が強ければ強いほど収益性は低いといえます。同じく外部要因を総合的に分析するためのSWOT分析と組み合わせると、外的な強み・弱みなどをよりくわしく分析することができます。
VRIO
VRIOとは、自社が所有するリソースについて次の4項目で分析するフレームワークです。
- Value(経済的な価値):チャンスやピンチに自社が対応できる能力があるか
- Rarity(希少性):競合他社が自社と似た商品を作っていないか
- Imitability(模倣困難性):自社商品の模倣がどの程度しやすいか
- Organization(組織):リソースを活かせる組織力があるか
外部環境を分析してから、自社の内情を振り返ることで、強みや弱みがよりくわしく把握でき、基本的な戦略立案のベースとして役立ちます。
バリューチェーン
バリューチェーンとは、原材料や部品の調達、商品製造や商品加工、出荷配送、マーケティング、顧客への販売、アフターサービスといった一連の事業活動を、価値(バリュー)の連鎖(チェーン)として捉えるためのフレームワークです。バリューチェーンを分析すると、商品が顧客に届くまでの企業活動を機能ごとに分類でき、ぞれぞれのレイヤーの強みや弱みを明確化できます。そうすると、重要度の高い課題の洗い出すことができるため、最終的に競争優位性を効果的に高める効果が期待できるのです。アメリカの経営学者、マイケル・ポーター氏が提唱したこの考え方は、製造業を中心に広く活用されています。
バリューポートフォリオ
バリューポートフォリオとは、現在自社が行っている事業を以下の2軸のマトリクスで評価するフレームワークです。
- 自社のビジョンとの整合性が高いか低いか
- 事業としてのROI(投資収益率)が高いか低いか
ROIとは、事業に投資した額に対してどの程度利益が回収できているのかを表す指標であり、株主目線の事業評価といえます。いくらビジョンとの整合性が高くても、企業が営利を求める以上、あまりにもROIが低い事業は縮小や徹底判断を下す必要があります。
事業単位ではなく、施策単位でもリソース配分や進退の決定に有用なフレームワークです。
STP分析
STP分析とは、Segmentation Targeting Positioning(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の3ステップで行う分析フレームワークです。
- セグメンテーション:市場を細分化する
- ターゲティング:狙う市場を決める
- ポジショニング:自社の立ち位置を決める
この3ステップを行うことで、B to Bマーケティングにおける顧客やニーズの分布を整理でき、自社のプロモーション戦略を明確化できます。また、自社のポジション取りによって他社との無用な競合を避けることもできるでしょう。STP分析は非常に便利なフレームワークですが、市場の成長率やアプローチの容易性などを見落としがちなので、市場分析に役立つその他のフレームワークも併用しましょう。
AIDMA(アイドマ)
顧客が購買決定に至るまでのプロセスを表した有名なフレームワークの一つがAIDMAです。
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
AIDMAでは、この1から5までのフェーズで、顧客の購買行動を分析します。それぞれのフェーズによって顧客に対する適切なアプローチが異なるため、B to Bマーケティングでは、ユーザーの購買へのモチベーションを見極め、施策内容を決定する際に役立ちます。
マーケティングファネル
顧客の商品購入前あるいは購入後の変遷で、その数が増減する様子を図式化したものをマーケティングファネルと呼びます。ファネルとは「漏斗(ろうと・じょうご)」のことです。
一購入までの段階である「購入ファネル」の場合、次の4段階で1から4になるにつれて顧客が絞り込まれ、逆三角形の図を描きます。
- 認知
- 興味・関心
- 比較・検討
- 購入
購入後の「影響ファネル」だと、今度は逆に1から3になるにつれて裾野が広がり、三角形の図を描きます。
- 継続(リピート購入)
- 紹介
- 発信
対象となる顧客がファネルのどこに位置するのかが分かれば、今後のプロセスに合ったB to Bマーケティング施策を立てやすくなります。
ビジネスモデルキャンパス
ビジネスモデルキャンパスとは、ビジネスモデルに関する以下の9要素を1枚の用紙にまとめて現状分析を行うフレームワークです。
- 顧客セグメント:誰に価値を提供するのか・最も重要な顧客は誰なのか
- 価値提案:顧客にどんな価値を提供するのか・どのようなニーズを満たすのか
- チャネル:どのチャネルを通じて顧客にアプローチするか・どのように価値を提供するか
- 顧客との関係:顧客とどのようなリレーションを構築するか
- 収益の流れ:どのような価値に顧客はお金を払うのか・何にお金を払っているか・どのようにお金を払っているか
- リソース:顧客に価値を提供するのに必要なリソースは何か
- 主要活動:顧客に価値を提供するのに必要な主要活動は何か
- パートナー:ビジネスモデルを構築するサプライヤーとパートナーのネットワーク
- コスト構造:ビジネスモデルを運営するにあたり発生するコスト
これら全てを1枚の用紙にまとめることで、ビジネスの全体像を俯瞰することができます。今後の展開を検討する際に1枚あると、チーム全体の情報共有に役立ちます。
アイデア抽出や課題整理に役立つフレームワーク
これから新事業展開を予定していたり、商品開発や改良を行ったりする場合、アイデアや課題の抽出・整理を行う必要があります。そういったB to Bマーケティングの際にもフレームワークを使うと、より分かりやすく情報の整理ができ、他の部署に対しても情報共有をスムーズに進めることができます。アイデア抽出や課題整理に役立つフレームワークを紹介します。
MECE
MECEは、ロジカルシンキングの基本というべきフレームワークです。Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略で、それぞれ次のような意味があります。
- Mutually:互いに、相互に
- Exclusive:重複せず、被らず
- Collectively:まとめて、全体に
- Exhaustive:漏れなく
つまり、「漏れなく、ダブりもない」ことを意識して情報を整理すべきということを示しています。どのようなフレームワークであってもMECEの観点から情報を見直すと、分析の精度が上がります。
MECEでロジカルシンキングをするためには、全体の枠組みに要素を当てはめていくトップダウンアプローチと個々の要素を洗い出してから全体像を描くためのボトムアップアプローチの2種類のアプローチがあります。ロジカルシンキングの思考法を訓練していくと、MECEの扱いも上達します。
ロジックツリー
MECEを意識しながら、要素を分解して全体構造を分かりやすくするために使うフレームワークがロジックツリーです。何かしらのトラブルに対する原因解明や問題解決を行う際、複雑に絡み合った要素を樹木が枝分かれしていくような感じでだんだん下位の概念に解きほぐしていくと、本質的な問題が見出しやすくなります。
ロジックツリーには、目的に応じて次の3種類があります。
- What:要素分解ツリー
- Why:原因追及ツリー
- How:問題解決ツリー
フォーカスする切り口が異なるだけで、どれもツリーの作り方自体は同じです。さまざまな場面で応用がきくフレームワークだといえます。
As is/To be
As is/To beは、現状と理想の姿を書き出し、それぞれを比較した上で、現状の問題を把握するためのフレームワークです。「As is」は現状、「To be」は未来の理想を指しています。このフレームワークは、さまざまなシチュエーションで応用できます。代表的な例は、以下のとおりです。
- 収益や集客などの各種課題の解決策を考える戦略立案
- 目標を達成できる部下を育てるための人材育成
- 顧客に対するコンサルティング
As is/To beのフレームワークを使う際は、To beから記入するのがポイントです。現状を先に書くと、どうしても思考が制限されやすくなるため、理想像をベースに現状を分析し、具体的なアクションを考えていきましょう。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは、伝えたい結論とそれを支える根拠を明示するためのフレームワークです。結論が一番上に位置し、そこから複数の根拠が下部に配置されていくため、見た目がピラミッド状になることから、この名がつけられました。
一見ロジックツリーとも似ていますが、その目的は異なります。ロジックツリーは問題解決のために用いられますが、ピラミッドストラクチャーは報告書やプレゼンテーションなど相手に論理の正しさと伝える説明・説得の場で用いられます。
ビジネスを実行する際に役立つフレームワーク
PDCA
PDCAサイクルとは、次の4つのアクションを繰り返しながら施策の改善を行うフレームワークです。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
計画を立てて、実行した後、そのプロセスや結果を評価し、明らかになった改善点をもとに次回以降の計画に生かしていくのがPDCAサイクルです。
B to BマーケティングにおいてもPDCAサイクルを適切に回すと、目標に対して行うべき次のステップを可視化でき、具体的なプランに落とし込めます。
PDCAを効果的に回すには、達成度合いが数値でわかるように目的を数値化し、より具体的かつ達成可能な計画にすべきです。
ガントチャート
ガントチャートは、プロジェクトのスケジュールや進捗管理に最適なフレームワークです。もともとは、工場などで生産現場の工程管理に利用されていたものなので、フレームワークというより表として認識している人も多いでしょう。
ガントチャートの縦軸に各種タスクや担当、アウトプットを置きます。横軸には時間を置き、タスクごとの所要期間を矢印や棒グラフ等で視覚的に示します。作業の始まりと終わりが一目見て分かるため、メンバー間のタスク管理や管理者にとっての進捗管理に役立ちます。
縦軸の項目や記入方法の工夫によって、さまざまなカスタマイズが可能です。
KGI/KPI/KDI
KGI / KPI / KDIは、アクションプランの改善に役立つ具体的な指標を設定するためのフレームワークです。それぞれの用語の意味は以下のとおりです。
- KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標
- KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標
- KDI(Key Do Indicator):行動回数の記録数値
KGIから逆算して、適切なKPIを決め、そのKPIを達成するために必要なKDIを算出することで、中間目標やアクション目標を具体的に策定できます。それぞれを数値化しておくと、仮に最終目標が達成できなかった場合も、KPIやKGIの達成率を細かく分析すれば、どこに要因があるかを明らかにできるため、次回以降の施策改善にも役立ちます。
KPT YWT
施策改善の際、「KPT YWT」も有用なフレームワークです。KPTとYWTという2つの考え方を組み合わせたものです。KPTは次の3つの質問をまとめたものです。
- Keep(継続すべきことは?)
- Problem(問題点は?)
- Try(次に挑戦することは?)
KPTの場合は、解釈を整理する意味合いが強く、基本的に次の挑戦が課題のときによく使われます。一方、YWTは次の3つの質問のセットです。
- Yattakoto(やったことは?)
- Wakattakoto(わかったことは?)
- Tsugini-yarukoto(ふまえて、次にやることは?)
YWTは、事実を学びに活かすという意味合いが強く、「実行したことによるメリット」や「成長の実感の確認」という視点が強めです。
マンダラチャート
マンダラチャートは、3×3の9マスの枠で構成されるシンプルなフレームワークです。マンダラチャートの使い方は、真ん中のマスにテーマを入れて、周辺の8マスに関連項目を入れていくだけなので、誰でも簡単に使えます。大谷翔平選手が目標達成シートとしてマンダラを活用していた事例が有名です。事業計画やアイデア出し、勉強、スケジュール作成などあらゆるシーンに応用できます。より多くのアイデアを出したいときは81マスのマンダラチャートがおすすめです。
OODA(ウーダ)ループ
社会変化の激しい昨今、従来の施策改善プロセスであるPDCAではスピード感が不足しているという指摘が増えました。そこで登場したのが、OODA(ウーダ)ループです。
基本的な方針は、「計画ありきで実行しつつ、成果を確認しながら改善していく」というものです。OODAの4要素は以下のとおりです。
- Observe(観察する):生データの収集
- Orient(方向づける):データを元にした状況判断
- Decide(決断する):方針決定
- Act(実行する):行動
OODA(ウーダ)ループ)は近年多くの企業で導入されており、B to Bマーケティングにおいても、その機動力を活かした施策改善のフレームワークとして活用されています。
SMART
SMARTは目標設定の際に、より質の高いゴールを決めるために活用したいフレームワークです。以下の5つの英単語の頭文字をまとめたものです。
- Specific(具体的か)
- Measurable(計測可能か)
- Achievable(現実的に達成可能か)
- Related(経営目標と関連性があるか)
- Time-bound(達成期限があるか)
目標設定のポイントは、いかに内容を具体的に決められるかどうかです。抽象的な目標を設定しても、達成できたかも判断できず、正しく評価できません。なにかの目標を立てる際は、ぜひSMARTを基準に考えましょう。
ネット活用のB to Bマーケティングに役立つフレームワーク
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、これまで対面接触のビジネスをしていた企業もネットを活用し始めました。リアルとネットでは、戦略の立て方が一部異なるため、これまでオンライン活用の経験がない場合は苦戦することもあるでしょう。ネット活用のマーケティングに役立つフレームワークをご紹介します。
SIPS(シップス)
SIPSは、SNSを中心とした新たな購買心理モデルを示すフレームワークです。2011年に電通デジタルコミュニケーションセンターが提唱しました。SIPSの頭文字が示すものは、以下のとおりです。
- Sympathize(情報の発信元に共感する)
- Identify(自分に有益かどうかを確認する)
- Participate(さまざまなレベルで参加する)
- Share&Spread(自分から情報を共有・拡散する)
SNSを活用したB to Bマーケティングの基本は、会社の理念や社会活動などブランドに対する共感です。ブランドから発信されるメッセージを気に入ったら、購買に至らないとしても、たとえば企業公式のSNSにいいねやリツイートをするなど、ゆるやかな参加をします。SIPSモデルは、そのような顧客の「ゆるい参加」も大事にしつつ、情報発信を軸にファンを集めていく戦略です。
AISAS(アイサス)
AISASとは、インターネットの普及によって変化した顧客の購買行動を表したフレームワークです。先述したAIDMAから派生しており、次の5つのフェーズを示しています。
- Attention(認知・注意)
- Interest(興味・関心)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(共有)
自分で商品情報を調べる「検索」や、商品を購入した後に発生する口コミ効果に着目した「シェア」が加わっている点がAIDMAと大きく異なる点でしょう。
特に「シェア」はSIPSモデルでも触れられていたとおり、これからのネットマーケティングでは企業発信のプロモーションよりも重要視されています。
DECAX(デキャックス)
DECAX(デキャックス)は、SIPSと同様、SNS活用を視野に入れながらコンテンツマーケティングを軸にした消費者行動モデルです。DECAXは以下の5項目の頭文字をまとめたものです。
- Discovery(発見):SNSや検索経由でなにかの関心を持つ
- Engagement(関係構築):発見された情報をきっかけに、顧客と関係を構築する
- Check(確認):商品のクオリティや機能、必要性など顧客が確認する
- Action(購買・行動):商品の購買を行う
- eXperience(体験と共有):商品を使った体験を他者に共有する
それぞれの行動フェーズに応じて、消費者は非常に多くの情報にふれます。DECAXは、その前提をふまえたフレームワークです。顧客はEとCの間を何度も行き来してから、商品を購入します。SIPSモデルの次世代の購買行動モデルです。
ULSSAS(ウルサス)
ULSSAS(ウルサス)とは、SNSが普及した現代特有のユーザー行動を活かし、UGCを活用して顧客の興味をひき、費用対効果の高いB to Bマーケティングを行うためのフレームワークです。UGCとは、ユーザー投稿コンテンツを指しています。ULSSASのそれぞれの頭文字の意味は下記のとおりです。
- U:UGC(ユーザーが写真つきの投稿などを行う)
- L:Like(UGCを見て、いいねやリツイートなどを行う)
- S:Search1(SNSで情報収集を行う)
- S:Search2(Google/Yahoo!で検索し、購入できる場所を探す)
- A:Action(購入できる場所に行き、実際に買う)
- S:Spread(商品の写真を撮り、拡散する)
1から6まで進んだら、また1に戻り、サイクルが循環していきます。
ASCEAS(アイシーズ)
AISCEAS(アイシーズ)は、AISASモデルをベースに新たな要素を加えた派生のフレームワークです。AICEASの流れは、以下のとおりです。
- Attention(注意):消費者が広告をみて商品を知る
- Interest(関心):商品について興味や関心を抱く
- Search(検索):商品の評判や詳細をインターネットで検索する
- Comparison(比較):類似商品と比べる
- Examination(検討):比較の後、購入を検討する
- Action(行動):実際に購入する
- Share(情報共有):商品を使った体験を他社に共有する
インターネットの普及により、口コミサイトやレビューサイトなどから類似商品の情報を得られる機会が多くなった顧客は、比較検討に時間をかけるようになりました。その結果、AISCEASという新しいフレームワークが生まれました。
VISAS(ヴィサス)
VISASは、2010年にITアナリストの大元隆志氏が提唱したモデルです。それぞれの頭文字は、以下の意味を示しています。
- Viral(口コミ):SNSの口コミ情報によって商品を認知する
- Influence(影響):情報を発信した人に影響される
- Sympaty(共感):商品の特徴や魅力に共感する
- Action(行動):実際に商品を購入する
- Share(共有):SNSなどにレビューを書く
VISASモデルもまた、ネット活用の戦略に役立つフレームワークと同様に、サイクル状になっています。インフルエンサーマーケティングはまさにVISASモデルの典型です。特に若い世代をターゲットにしたマーケティングで役立つフレームワークといえるでしょう。
Dual AISAS(デュアル・アイサス)
Dual AISASは、AISASをさらに発展させた購買行動モデルです。2015年にアタラ合同会社と電通プロモーション・デザイン局が開発・提唱したもので、従来のAISASに加えて次のAISASも追加して考えます。
- Activate(起動):商品・サービスに興味をもつ
- Interest(興味):商品・サービスに参加の意識をもつ
- Share(共有):ブランド情報に共感し、Webで共有する
- Accept(受容):第三者がシェアされた情報を受け取る
- Spread(拡散):第三者がシェアされた情報を拡散する
本来のAISASは購買飲みを目的としていますが、新たなAISASでは顧客がオンライン上のコミュニケーション要素が加わっています。この新しいAISASは、本来のAISASのAttention(注意)に内包されていると捉えればよいでしょう。
CIA
CIAとは、ネット上のセキュリティに必要な以下の3要素を示したフレームワークです。
- Confidentiality(機密性):情報に対するアクセス権限を徹底して保護・管理する
- Integrity(完全性):改ざんや過不足のない正確な情報が保持されている状態にする
- Availability(可用性):情報をいつでも使える状態を保持する
これまでのフレームワークとは異なり、CIAは企業の守りに必要な考え方です。情報漏えいなどのネット上のリスクは、万が一トラブルになると被害が甚大です。そのため、できる限り未然にトラブルを防ぐべく、経営レベルでセキュリティ方針を策定し、法務担当者と連携しながら、現場に浸透させるべきでしょう。
まとめ
今回ご紹介したフレームワーク30選は、いずれも有用なものばかりです。
- 基本戦略の立案に役立つフレームワーク
- アイデア抽出や課題整理に役立つフレームワーク
- ネット活用のマーケティングに活用できるフレームワーク
どのフレームワークにしても、今回ご紹介した概要に加えて、実際に使う際はぜひ具体的な活用事例や詳しい考え方をきちんと理解してから使いましょう。理解度が浅いと、逆にフレームワークに振り回されてしまいます。ぜひ今回の記事を参考にしながら、使えそうなフレームワークを発見して、さらに学びを深めてください