はじめに
さまざまな業界で「エンドユーザー」という言葉が使われていますが、正確な理解ができていないためにディスコミュニケーションが生じることがあります。エンドユーザーと顧客とでは用語の意味が異なりますが、しばしば定義を混同しがちです。今回は、エンドユーザーという言葉について正しく理解できるよう、業界ごとの使われ方や関連ワードについてくわしく解説します。
エンドユーザーとは
エンドユーザーとは、末端消費者、最終消費者あるいは最終顧客のことです。たとえば、ペットフードを生産しているメーカーであれば、エンドユーザーはその商品を購入する飼い主ではなく、最終的に食べるペットを指します。その商品を最後に使う人は誰なのかを考えれば、エンドユーザーに行き着きます。また、契約書の書面ではしばしば再販業者ではないという意味合いで、エンドユーザーという言葉を用います。
IT業界のエンドユーザーとは
IT業界におけるエンドユーザーとは、各種ソフトやアプリ、デバイスを利用する人のことを指します。たとえば、何かしらのシステムを受注開発しているメーカーであれば、そのシステムをリリースした後に現場で使う人達がエンドユーザーです。依頼元がエンドユーザーとは限らない点に注意しましょう。
建設業界のエンドユーザーとは
建設分野のエンドユーザーは、立場によって以下の3通りに分かれます。
- 建物の建築を依頼する人
- 実際に建築を手掛ける人
- 建築物件を購入する人
注文住宅のデザイナーにとっては、1の施工主がエンドユーザーに当たります。建築資材を製造しているメーカーからすれば、2の建築業者がエンドユーザーでしょう。建て売りの物件を建設するのであれば、3の購入者がエンドユーザーです。
また、例外として商業施設を建築する場合はテナントの入居者がエンドユーザーになるといえるでしょう。
不動産業界のエンドユーザーとは
不動産業界の場合、エンドユーザーとは流通のプロセスにおける最終的な消費者を指します。たとえば不動産物件を仲介する仕事の場合、売り手と買い手双方が顧客となりますが、エンドユーザーはその物件に将来的に居住する人と考えられます。
エンドユーザーの関連語
エンドユーザーという用語に関連して、その略称や対義語、業界ごとの専門用語についても合わせて押さえておきましょう。そういった関連知識の理解も深めておくと、文脈の読み違えで生じるコミュニケーショントラブルのリスクがより軽減できます。
エンドユーザーの略
エンドユーザーは、しばしば「EU」あるいは「E/U」と略されます。ただしEUという記載は欧州連合と誤解されるケースも多いため、相手との共通認識ができるまでは略称は使わない方がよいでしょう。
エンドユーザーの対義語
商品を最終的に使うエンドユーザーに対して、対照となるのは「製造者」や「メーカー」です。農作物であれば、実際に食べる人がエンドユーザーであり、反対に位置するのが生産者である農家の人達です。つまり、商品を作って提供する立場の個人や企業を示す用語が対義語といえるでしょう。
エンドユーザーコンピューティング
エンドユーザーコンピューティングとは、プログラマーではない人でもアプリケーションを作成しやすくする支援システムとプラットフォームのことです。EUCとも略されます。本来はアプリケーションを消費する立場のエンドユーザーが、専門知識がなくても対義語である開発者になれる仕組みを指しています。
エンドユーザー使用許諾契約
エンドユーザー使用許諾契約とは、IT業界でソフトウェアの開発元と購入者の間で交わされる契約です。英語ではEnd-User License Agreementと表すため、略してEULAともいいます。ソフトウェアの使用や複製、譲渡など、購入者がしてもよい行為と禁止される行為を明記し、合わせて開発元による保証やサポート、責任の範囲、免責事項なども定めています。
エンドユーザーランタイム
コンピューターゲームなどを始める際に、「DirectXエンドユーザーランタイム」のインストールが要求されることがあります。ゲームで多用されるDirectXというWindows上のプログラムの中でさらに追加で必要となる定型文をまとめたライブラリのことを指します。エンドユーザーの必要に応じて、Microsoftのサイトからダウンロードできる仕組みになっています。
サブユーザーとは
エンドユーザーと関連した用語に、サブユーザーがあります。サブユーザーは、商品を最終的に消費することはあっても、その使用が日常的ではない場合を指します。たとえば、ガス会社からすれば、各住居でガスを使う人がエンドユーザーです。一方、住居の点検でガスを使うハウスメーカーやメンテナンス業者であれば、消費頻度が少ないサブユーザーに該当します。
まとめ
エンドユーザーという用語の意味は、話の文脈や業界によって該当する相手が異なります。特にエンドユーザーと顧客が異なる場合、商品改良や新商品開発の際にはエンドユーザーの目線も重要な参考材料です。ふだんエンドユーザーと接する機会がない事業ほど、エンドユーザーへのリサーチも忘れず実施するとよいでしょう。