顧客のセグメンテーション

顧客セグメンテーションとは?分類呼称を解説

顧客のセグメンテーション
顧客のセグメンテーションはマーケティング戦略のスタートでもある

はじめに

顧客セグメンテーションは、広告や商品開発の場で用いられる機会が多く、マーケティング担当者なら押さえておきたい基本知識です。本原稿では顧客を細分化する具体的な手法と分類した顧客の特徴をまとめました。

顧客セグメンテーションとは

顧客セグメンテーションとは、特定の基準で顧客をグルーピングする手法です。1900年代の前半から特に大手企業で多用されています。

たとえば、1923年から14年間に渡ってゼネラルモーターズ社の社長に就任したアルフレッド・スローン氏は、当時、顧客セグメンテーションを活用し、ブランドの階層による多品車量産という生産スタイルを採用し、アメリカの自動車業界のトップをとりました。

中小企業であっても、リスティング広告などを展開するタイミングなどで顧客セグメンテ-ションにふれる機会があるでしょう。ユーザーの性別や年齢などさまざまな情報をもとに顧客を細分化することで、効果的な媒体や表示タイミングを決めるのです。

市場を細分化し、それぞれの層の特徴を知っておくことで、自社の顧客に対する理解を深め、新たな価値を提案しやすくなります。

統計的セグメンテーションとは

顧客セグメンテーションでよく使われる手法の一つが、統計データを基準にした統計セグメンテーションです。

  • 人口統計
  • 地理統計
  • 心理変数
  • 行動変数

これら4つの統計を基準に、顧客を切り分けていきます。マーケティングの現場では意識せずに使っているケースも多いかもしれません。あらためて基本的な考え方を確認していきましょう。

デモグラフィック(人口統計分布)

デモグラフィックとは、顧客の属性によって異なる変数です。B to CとB to Bでは変数の内容が異なり、主に次のような項目でセグメントを作成します。

  • B to B:業種、担当者の役職、取引年数 など
  • B to C:年齢、性別、家族構成、世帯年収、社会的階層 など

デモグラフィックを使ったB to Bの例だと、たとえば同じ商品だとしても相手の立場によって、訴求すべき価値が変わります。中間管理職が相手なら、マネジメントコストの削減が価値になりえます。一方経営者であれば、売上アップの可能性を数字で示すと喜ばれる可能性が高いでしょう。

B to Cの事例としては、不動産営業がイメージしやすいかもしれません。世帯内容やライフスタイルによって顧客にあった物件の間取りや立地は異なります。

このように、デモグラフィックは日頃のビジネスシーンで意識せずに使っているケースが多く見られます。

ジオグラフィック(地理的変数)

ジオグラフィックとは、国や都市、地区町村によって顧客を細分化する変数です。特に広告を展開する場合、ジオグラフィックの変数設定が必要とされています。決して難しいというものではありません。

特にわかりやすいのが求人広告のエリア設定でしょう。リモートワークが可能な企業でない限り、自社に通勤できるエリア内に居住している対象者に訴求する広告を打つ必要があります。求人広告に限らず、ジオグラフィックを使う場合、過去の経験職種や年齢など他の変数とも組み合わせて広告効果を高めるケースが大半です。

ジオグラフィックを重視した戦略の場合、たとえばメッセージの中にあえて地域限定の用語や方言を入れ込むケースもあります。たとえばNetflixが27の国と地域で展開したキャンペーンでは、「We’re only one story away.(ひとりじゃない、世界がある。)」というメッセージをそのエリアに合わせた言葉遣いに変換。たとえば大阪エリアでは、「ひとりちゃう、世界があんねん。」というコピーが用いられました。

サイコグラフィック(心理的変数)

顧客セグメンテーションを用いる場合、顧客の心理的要素も変数として組み込むことがあります。この心理的変数を、マーケティングではサイコグラフィックと呼びます。

  • 性格は几帳面なのか、おおらかなのか
  • 生活習慣は朝型なのか、夜型なのか
  • 調和を大事にするタイプなのか、一番を取りたいタイプなのか

上記は心理変数の一例です。このような本来はデータ化しにくい部分にも着目し、顧客の特徴をよりくわしく捉えておくと、よりピンポイントかつ的確な価値の訴求が可能です。

たとえば江崎グリコのチョコレート「GABA」は、ストレスを感じるとつい甘いものに手が伸びるという層に対して、刺さるメッセージを展開しています。サイコグラフィックは商品開発にも活用できるため、日頃から顧客の動向をリサーチし、特に影響が大きい変数を探っておくとよいでしょう。

ビヘイビアル(行動変数)

ビヘイビアルは、たとえば顧客の購買履歴や購買タイミングなどといった行動分析をもとにした変数です。現代ではビッグデータの活用やAIによる分析技術の進歩によって、このビヘイビアルの重要度がさらに増しています。

ビヘイビアルを徹底的に活用し、顧客の購買率を高める施策をとっているのがAmazonです。過去の検索履歴や購入内容などのデータをAIが細かく分析することで、適切なタイミングでおすすめ商品を提示したりメールでリピート購入をリマインドしたりする仕組みが構築されています。ビヘイビアルを土台としたオファーが、Amazonを利用する顧客一人ひとりの購入頻度や単価を高めているのです。

Amazonほど大規模なシステムを導入しなくても、ビヘイビアルの活用は十分可能です。たとえばホームページのアクセス分析からでも、検索ワードやアクセスの時間帯などから顧客の情報を収集できます。マーケティング担当者であれば、こういったデータの活用法もぜひ習得しておきたいところです。

4Rによるセグメンテーション

自社で採用している顧客セグメンテーションが本当に効果的な区分になっているかどうか、マーケティング担当者は定期的にチェックする必要があります。そのチェック項目としてよく使われるのが4Rです。具体的には以下の内容を示しています。

  • Rank(優先順位):市場の優劣が明確であり、特に注力すべき層を選定できるかどうか。
  • Realistic(有効な規模) :十分に売り上げをあげられる規模の市場・ターゲットかどうか。
  • Reach(到達可能性):その層に対して自らの商品の情報が届けられるチャンネルがあるかどうか。
  • Response(測定可能性):ユーザーに与える影響を何らかの方法で計測できるか。

これらの4つのRをクリアしていれば、顧客セグメンテーションの効果は出やすい状態といえます。

STPによるセグメンテーション

顧客セグメンテーションは、しばしばSTP分析の一環で用いられます。STP分析とは、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の3軸による分析のフレームワークです。STP分析は通常、次の流れで行われます。

  1. セグメンテーション:前述した顧客セグメンテーションを参考に変数を集め、必要に応じて組み合わせながら市場を細分化する。
  2. ターゲティング:セグメンテーションを行った顧客層のうち、自社の商品展開が最も効果的と予測される市場を選定する。
  3. ポジショニング:競合他社と自社の強みや弱みを分析し、市場における自社のポジションを明確にする。3C分析やSWOT分析などを用いる。

このフレームワークを活用することで、細分化した顧客に対してよりポイントを押さえたマーケティング施策を打ち出せます。結果として、成約率の上昇やリピート率の向上、そしてLTV(顧客生涯価値)の改善が期待できます。

年代別マーケティングによるセグメンテーション

顧客セグメンテーションの考え方の一つに、顧客を年代別に細分化する手法があります。主に放送業界や広告業界で用いられ、特に2000年代では主流の考え方でした。最近では顧客のライフスタイルが多様化しており、従来ほどは重視されなくなっていますが、マーケティングの基本知識としてそれぞれの用語の定義を身につけておきましょう。

C層 (Child、Kids) 4歳~12歳男女

C層は4~12歳の子どもを指します。この層自体には購買力がありませんが、子ども向けの商品を展開している企業であれば、押さえておく必要があります。C層が好むおもちゃや動画をチェックしておくと、母親世代を巻き込んだブームを起こせる可能性もあります。

T層 (Teen-age) 13歳~19歳男女

T層はいわゆるティーンエイジャーです。最近ではTikTokをはじめSNSの若年化が進んでおり、購買力こそ低いものの、T層の嗜好が新たなトレンドを生み出す場合があります。

T層の動向に着目しておくと、後のM1層やF1層へのアプローチがしやすくなるでしょう。

M1層 (Male-1) 20歳~34歳の男性

M1層は20〜34歳の男性を指します。若手の労働人口として重宝される層で、ビジネスやスキルアップへの関心が高いといわれています。ITに関する知識が豊富な人が多く、インターネットからの情報収集を怠りません。最近では副業や独立志向が高まっていると見られています。

M2層 (Male-2) 35歳~49歳の男性

M2層は35〜49歳の男性を指します。社会人の中堅層で、会社内でも管理職ポジションが多いでしょう。プライベートでは既婚率が高くなり、ある程度の経済力を持っています。M2層の傾向としてはタバコやお酒の嗜好品、会社の飲み会といった人付き合いや外食にお金を使う人が多いといわれています。

M3層 (Male-3) 50歳以上の男性

M3層は50歳以上の男性を指します。年功序列型の企業であれば、決済権のある役職についている人が多く、経済的なゆとりが大きい層と認識されています。この層は、身の回り品の品質を重視し、高級品にもお金を投資する傾向にあります。健康に対する意識も高めです。

F1層 (Female-1) 20歳~34歳の女性

多くのマスメディアがターゲットとしているのが、F1層の女性です。トレンドに敏感で消費意欲が高く、特にアパレルやコスメ業界であればコアターゲットになりやすい層といえます。経済力はそこまで高くありませんが、未婚が多く、自分磨きに投資しやすい年代と考えられています。

F2層 (Female-2) 35歳~49歳の女性

 F2層のイメージを一言でいうなら「小学生~中学生くらいの子どもを持つ主婦」です。家庭内消費におけるキーパーソンと捉えられ、特に日用品関係や子どもの教育関係の業界では長らくコアターゲットとされてきました。最近では晩婚化や未婚化によって、従来のイメージと実態がずれてきていると指摘されています。

F3層 (Female-3) 50歳以上の女性

F3層は、男性のM3層と同様に、経済的にある程度余裕があり、高品質なアイテムを好む傾向にあります。健康に対する意識が最も高い層なので、健康食品のコアターゲットになりやすい層です。テレビをよく視聴する層なので、テレビショッピングなどの番組はこの層の嗜好に訴求する内容が多く見られます。

世代別マーケティングによるセグメンテーション

顧客セグメンテーションで年代と合わせて使われる考え方が世代別の区分です。顧客の特徴を捉えるだけではなく、時代に応じた消費傾向の変遷を知るためには有用な考え方なので、マーケティングの基礎知識としてぜひ押さえておきましょう。特にミレニアル世代やZ世代は今後のマーケティングでより注目が高まる層なので要チェックです。

※各年齢は本原稿作成の2021年を目安として設定しています。

戦前世代

戦前世代といわれる人たちは、おおよそ90代から100歳を超える年齢です。保守的な人が多く、戦争体験の影響から個人の消費に対して消極的な傾向だとされています。高齢化に伴い、シニア3大不安とされる「お金・健康・孤独」を抱えている人が大半です。そのため、顧客の不安を軽減できるような商品を扱っているのであれば、ターゲットとなるでしょう。

戦中世代

戦前世代と同じく、消費に対してやや後ろ向きで倹約志向が強いのが戦中世代です。年齢としては80歳以上の人が該当します。この世代は、自分のためにお金を使うというよりは、孫に対して投資したいと考える傾向にあります。また、戦前世代と同じくシニアに多く見られる不安を解消する商品は訴求しやすいでしょう。

団塊世代

太平洋戦争後に築かれた家庭で生まれた人たちの世代を団塊世代と呼びます。年齢としては70代前後であり、戦後日本の経済復興をけん引したエネルギッシュな世代です。特徴として、同世代に対する仲間意識が強く、新しい物やすでに高く評価されている物を好みます。団塊世代をターゲットとしたキャッチコピーやセールストークでは、これらの傾向をふまえて言葉を選ぶとよいでしょう。

断層世代

断層世代に該当するのは60代前後の人たちです。ちょうど「ポパイ」や「JJ」といった若者向け雑誌が創刊した頃にヒッピーカルチャーの影響を強く受けていることから、ポパイ・JJ世代とも呼ばれます。保守的な考え方や多数派の意見を嫌い、「自分らしさ」や「楽しさ」を好む傾向にあります。そのため、娯楽に結びつくような個人消費タイプの商品が刺さりやすい世代といわれています。

新人類世代

新人類世代は、高度成長期に子ども時代を過ごした世代です。年齢としては、50代中頃でしょう。断層世代以上に「人生を楽しむマインド」が強く、遊び心や快楽的な部分のアピールが販促につながる層だといわれています。またブランド物を非常に好む傾向があり、派手な消費に対する抵抗感が全体的に低い世代です。

団塊ジュニア世代

1980年代後半に訪れたバブル景気の時代に社会人になり、その後バブル崩壊も経験した世代が、この団塊ジュニア世代です。年齢としては40代後半から50代前半の人たちが該当します。団塊ジュニア世代は、ブランド志向や恋愛志向が強く、自分をよく見せたいという欲求から商品を購入する傾向にあります。そのためアンチエイジング商品や「モテ」を訴求した商品のターゲットになることが多い世代です。

ゆとり・さとり世代

ゆとり・さとり世代はバブル崩壊以降に生まれ、少子化の影響を受けて育った層です。年齢としては主に30代が当てはまります。競争を好まない傾向が強く、華美な消費を嫌う人が多いのが特徴です。輝かしい未来を連想する商品よりも1990年代のトレンド等をふまえたノスタルジー感のある商品のほうが売れやすい層です。

ミレニアル世代

2000年以降に成人を迎えた1981~1995年生まれの層を、ミレニアル世代といいます。別名、Y世代です。コストパフォーマンスを重視する傾向が強く、自分の個性を出せる商品を好みます。この世代はGoogle検索を特に多用するため、SEO重視のコンテンツマーケティングで訴求しやすい層といえるでしょう。

Z世代

1996~2010年生まれの層をZ世代と呼びます。今のマーケティング戦略で主に扱う世代の中では最も若い層です。全体的にはミレニアル世代と似た傾向がありますが、ITに対する理解度が非常に高く、SNSを使いこなします。この世代は特にインスタを重視しており、情報検索の手段としてもSNSを多用します。インフルエンサーマーケティングが最も訴求しやすい層と考えられます。

まとめ

今回の記事の内容をまとめると、顧客セグメンテーションについては次のような内容が分かりました。

  • 顧客セグメンテーションとは、市場を細分化することでより効果的なマーケティング施策を展開するための考え方である。
  • 分類方法としては、統計変数を用いたもののほか、年代や世代を基準とした区分がある。
  • 顧客セグメンテーションを活用して戦略を立てる場合、STP分析が有効である。

顧客の生活様式が多様化する中で、世代や年代によるセグメンテーションは時代に合わせたアップデートが必要といわれています。今回の記事の内容を土台として、顧客の理解を深めるべくぜひ独自の視点を加えてみてくださいね。

原稿は「顧客を増やす方程式」に掲載しています。サイトではファンマーケティングBtoBマーケティング新規顧客の獲得差別化などの記事をラインナップしています。

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サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

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