はじめに
企業内のローカルルールや業界内の通例によって、顧客やクライアント、お得意様などさまざまな呼び方が用いられていますが、重要なのは用語の使い方のルール付けです。どの用語がどんな顧客層を指すのか伝われば、失礼がない範囲ならいずれの呼称の使用も問題ありません。
もし社内で統一できていない場合、今回の記事を参考に、名称の定義を明文化しておくとよいでしょう。
顧客の種類
自社の商品やサービスを購入する意思と経験がある人を顧客といいます。顧客をさらに分類すると以下のようになります。
- 潜在顧客
- 見込み顧客
- 新規顧客
- リピーター
用語の理解が統一できていないと、トラブルが生じかねません。たとえば見込み顧客に対する提案をしているのに、聞き手が新規顧客をイメージしていたら話が食い違うでしょう。そのような事態を防ぐために、用語の意味を詳しく見ていきましょう。
潜在顧客とは
潜在顧客とは、まだ自社のブランドを認知していない、あるいは認知しているとしてもまだ商品の購入には至らない段階のお客様を指します。その商品の価値をきちんと知っていただけば、購入の可能性があるというのが重要なポイントです。
潜在顧客の中には、自分のニーズを認識しているお客様だけではなく、ニーズに気づいていない層も含まれます。この段階のお客様を掘り起こし、商品に関心を持つ「きっかけ」を作るのがマーケティング戦略の基軸の一つといえるでしょう。
見込み顧客とは
潜在顧客よりが商品を認知し「いつか買おうかな」程度の興味を抱いている状態にまで進むと見込み顧客といわれます。購入に踏み切るまでに、最後の一押しが必要な状態です。
見込み顧客向けのアプローチとしては、さまざまな広告で商品の魅力をPRしたり、無料や安価で製作できるサンプルを配ったりといった販促活動を主に行います。
同じ意味で、顕在顧客という言葉を用いるケースもあるので、頭に入れておきましょう。
新規顧客とは
商品を初めて購入してくださった顧客を新規顧客と呼びます。マーケティング戦略を通じてさまざまな「きっかけ」を提供し続けた結果、潜在顧客が見込み客を経て、新規顧客へと育っていくのです。新規顧客の集客には既存顧客の5倍以上かかるといわれるのは、これが理由です。
ただし、新規顧客が同じ商品を何度も購入してくれるとは限りません。特に高額な商品ほど、二度目の購入までのハードルが高くなります。
新規顧客を1回限りで終わらせないための施策が、販売戦略の鍵を握ります。
既存顧客とは
一度でも商品を購入した経験がある顧客を包括的に表す用語が、既存顧客です。何年も商品を買い続けているファンはもちろん、1回の購入でブランド離れを起こした顧客も含みます。
疎遠になってしまったお客様にどのようにリマインドを仕掛け、再購入にまでつなげるのかは悩ましい問題です。お客様の嗜好と商品が合わなかったなどの理由の場合、再集客は非常に困難です。
既存顧客を囲い込むためには、アンケートやヒアリングを実施して商品改良を重ねたり、新商品を開発したりといった地道な努力が欠かせません。
リピーターとは
2回目以降も商品を購入してくださる顧客はリピーターと呼ばれます。ビジネスの発展には、リピーターの獲得が極めて重要です。
たとえば根強いファンが多いApple社のリピーターをイメージしてみましょう。携帯を機種変更する際にはiPhone一択、イヤホンもタブレットも全てApple製品を選ぶ彼らは、Apple社の製品の世界観に共感しています。機能面や価格面でより優れた商品を他社がリリースしても、Apple社のリピーターの大半は目もくれないでしょう。
このように、リピーターの存在は企業にとって財産なのです。
シーン別の顧客の呼び方の種類
マーケティング担当者や営業職の特徴として、「顧客」という言葉を個人ではなく「顧客層」を示す概念として使いがちです。お客様は一人ひとり個性の違う人であるという意識が抜けてしまうと、知らないうちに失礼をする、プロモーションで間違いをする可能性があります。
実際に目の前でお客様個人とふれあう接客の現場ではどのような顧客の呼称が用いられているのかもチェックしましょう。
会員制で見られる顧客の呼び方
会員制のスーパーや飲食店のようにリピーター中心で集客している店舗では、次のような顧客の呼称を用いているケースが多く見られます。
- メンバー
- ゲスト
- メイト
- フレンド
- 会員
どの呼称にしても、合わせて顧客の個人名を添えて「メンバーのA様」「メイトのB様」といった呼び方をすることが多いようです。会員制のお店では一般的に顧客と店員の距離が近く、顧客を丁寧に扱うことで商品やサービスの価値を高めています。
飲食店で見られる顧客の呼び方
毎日たくさんのお客様を出迎える飲食店では、次のような顧客の呼び方がなされています。
- お客様(お客さん)
- 常連客(常連さん)
- 一見客(一見さん)
お客様との距離感は店の業種によっても異なります。ラーメン店のようにざっくばらんな接客を顧客側が求めている場合「お客さん」というフランクな呼称も使われます。
ただし不快に感じる人も一定数いるため、スタッフ教育の観点から「お客様」という呼称で統一している店も多いようです。
ネットショップで見られる顧客の呼び方
ネットショップの場合は、顧客のことをカタカナ用語で呼ぶことが多いようです。代表的な呼称を以下に挙げました。
- ユーザー
- カスタマー
- メンバー
カタカナ用語以外では次のような呼称もよく使われます。
- お客様
- 会員
- お得意様
- 上得意様
ネットショップの場合は、購入額や頻度に応じてランクを用意している場合があり、たとえば「ゴールド会員様」「シルバー会員様」という使い分けをする場合もあります。ランクに応じた特別なセールや限定オファーを展開するケースも珍しくありません。
一般企業で見られる顧客の呼び方
一般企業では、顧客を次のように呼ぶケースが多いでしょう。
- お客様
- 取引先
- クライアント
取引の規模が大きい顧客に関しては、「大口取引先」や「ビッグクライアント」という用語を使う場合もあります。その他、関係性によって次のような言葉もよく用いられます。
- 広告主
- スポンサー
- ビジネスパートナー
不動産業界であれば、「施工主」や「お施主様」という用語もよく使います。顧客を表す言葉によって、相手との力関係や取引規模といった情報もまとめて伝えられるのが特徴です。
販売業で見られる顧客の呼び方
販売業だと、次のような顧客の呼称を主に使います。
- お客様
- お得意様
- 上得意様
- VIP
呼び方によって、顧客の年間購入額や付き合いの長さがある程度類推できる仕組みです。そのほか、相手の立場や状況に合わせて、次のような呼称も用います。
- バイヤー
- コンシューマー
バイヤーは商品の仕入れを目的とした顧客のことです。卸売業でよく使われる呼称です。一方、消費者を意味するコンシューマーは購入した商品を自分の身の回りで実際に使う層を指しています。
カタカナで使われている顧客の呼び方
さまざまな顧客の呼称のうち、つい混乱してしまいがちなのがカタカナ用語です。以下に代表的なものを取り上げました。
- カスタマー
- ユーザー
- エンドユーザー
- アクティブユーザー
- ユーザー
- ヘビーユーザー
- クライアント
- コンシューマー
- リピーター
この中で特に分かりにくく、かつ使う機会が多いのは、エンドユーザーでしょう。商品を最終的に使用する顧客を表す言葉です。たとえば自社の商品がプレゼントとして購入された場合、プレゼントを受け取った人がエンドユーザーに該当します。
まとめ
今回の記事の内容をまとめると、顧客という言葉の意味や使い方については次のような内容が分かりました。
- 失礼のない呼称であれば基本的には問題ないが、社内で統一することが望ましい。
- 商品を認知すらしていない潜在顧客から何度も購入しているリピーターまで幅広い層を指す。
- 業界や業種によっても使う言葉が異なり、特に顧客と直接やりとりをする接客の場面では多様な言葉が使われている。
たかが言葉ひとつ、と思われるかもしれませんが、顧客へのスタンスや温度感が「顧客」の表現だけで伝わってしまいます。
「神は細部に宿る」という言葉もある通り、これからリピーターをどんどん育てていくために、ぜひ今回の記事を参考に顧客の呼称を見直してみてください。
本原稿は「顧客を増やす方程式」に掲載しています。サイトではファンマーケティングやBtoBマーケティング、新規顧客の獲得、差別化などの記事をラインナップしています。