顧客のベネフィットとは

顧客ベネフィットを理解し、購買意欲を高める活用法とは

顧客のベネフィットとは
顧客のベネフィットは体系的に捉えることが大事

はじめに

ベネフィットとは、マーケティング用語の1つで「顧客が商品から得られる恩恵やプラスの効果」とされています。ベネフィットは、潜在顧客層の購買意欲を高める効果があるため、マーケティングでは重要視されています。今回は、ベネフィットの概念やマーケティングへの生かし方などについて詳しく解説します。ベネフィットの使い方をマスターして、マーケティングに生かしましょう。

ベネフィットとメリットの違いと

ベネフィットを正しく理解する上で、よく混同される言葉が「メリット」です。以下で、ベネフィットとメリットの違いを解説します。ベネフィットとは、商品やサービスそのものではなく、商品やサービスを通じて提供できる便益・恩恵を指します。一方、メリットとは、商品やサービスそのものの特徴やセールスポイントを指します。マーケティングの格言の1つ「ドリルを買いに来た人が求めているものは、ドリルではなく穴である」で解説すれば、メリットは「ドリル」、ベネフィットは「ドリルで開けた穴」です。

開けた穴が素晴らしければ、お客さまはベネフィットを感じていただけます。つまり、商品やサービスを販売するとき、ベネフィットをうまく提示して商品に興味を持たせ、メリットをアピールすれば魅力がより伝わります

ベネフィットの設定方法

顧客の購買意欲を高めるためには、ベネフィットの設定が重要です。そこでベネフィットを設定するときの3つのポイントを解説します。ベネフィット設定は、商品の特徴ではなく、顧客視点でメリットを訴求できているかをチェックしてください。

  • 顧客の悩み・問題を抽出する
  • 共感できるストーリー作り
  • 課題の解決方法をロジカルに提示

顧客の悩み・問題を抽出する

ベネフィットを設定するうえで、まず、ターゲッティングした顧客の抱えている悩みや問題の特定からはじめます。そして、悩みや問題を特定したあと、解決策を見つけます。

顧客の抱える悩みや問題に対する解決策は、結果、ベネフィットにつながります。なぜなら、人は何らかの悩みや問題を解決するために商品やサービスを購入するからです。悩みや問題を特定するときは、「どんな人が、どのような理由で、どのような悩みや問題を抱えているのか」をできるだけ具体的に表す必要があります。

特にターゲットは具体的に細かい設定が求められます。ターゲッティングが抽象的になれば、全体的にぼんやりした内容になり、誰の心にも響かない商品やサービスが生まれます。なるべく専門的かつ具体的に「悩みや問題点」の設定を意識しましょう。

共感できるストーリー作り

顧客層のターゲッティングができたら、次はターゲットに「共感」してもらえる共感ストーリーを考えます。ストーリーの目的は、ターゲットに悩みや問題を認識させて生まれた共感を販売に生かすことです。また、ベネフィットに対しての信頼性の向上にもつながります。ストーリーを作成するときのコツは、テレビショッピングを思い浮かべてください。テレビショッピングでは、商品やサービスを紹介する前に必ず 「同じように悩んでいた人の悩みや状況、改善結果など」を紹介しています。これは、同じ悩みを抱えるターゲットに共感してもらえるように仕掛け、「じゃあ、自分も買ってみようかな?」と購買意欲に火をつけるきっかけを作っています。共感ストーリーを作るときは、まず、ターゲットとなる顧客層に潜在的に抱えている問題を意識させるストーリー作りを心がけてください。

課題の解決方法をロジカルに提示

ターゲットの悩みや問題を明確にし、「共感」を得るストーリーができれば、ベネフィットを提示します。提示するときは、「メリット」ではなく、「ベネフィット」を伝えるように気をつけます。一言でいうと、「主語」が商品なのか・ターゲットとなる顧客なのかの違いです。例えば、化粧品や美容サプリ販売の場合では、まず、顧客の抱えている肌トラブルの悩みについて提示します。すると顧客はその悩みに共感を持ち、製品に興味を抱きます。そこに「自社の商品であなたの悩みは解決できます!」とベネフィットでアピールすれば、顧客の購買意欲は上がり購入にいたります。重要なのは、顧客の抱えている悩みや問題を解決できるベネフィットをストーリーでわかりやすく提示できるかどうかです。そのためには、ターゲッティングもストーリーの組み立ても具体的な設定が必要です。

ベネフィットをマーケティングにいかす方法とは150

ベネフィットは大きく4つに分類できます。そして、それぞれは特徴が違い顧客へのアピールポイントも異なります。こちらでは、4つのベネフィットの特徴をブランド力の強いナイキの事例を交えながら解説します。

  • 機能的ベネフィット
  • 情緒的ベネフィット
  • 自己表現ベネフィット
  • 社会的ベネフィット

機能的ベネフィットをいかす

機能的ベネフィットとは、商品やサービスが提供する機能の利便性をアピールするものです。例えば、顧客が商品を使うことで感じる、便利、早い、簡単などです。ナイキのシューズで具体的に例えると「ピッタリ吸いついてフィット感が良い」「走り出すときのグリップ感がしっくりくる」などがあげられます。

シューズの機能や性能を通しての体感、体験はアスリートをはじめ、スポーツをする人にとって重要なベネフィットです。つまり、マーケティング戦略において、機能的ベネフィットを生かすには、商品やサービスの機能的な長所で顧客に魅力をアピールするのがポイントです。

情緒的ベネフィットをいかす

情緒的ベネフィットとは、商品やサービスに対する感情的な便益を意味します。例えば、顧客が商品を使うことで感じる、安心感、高級感、充実感などです。ナイキのシューズで具体的に例えるとデザインについて「カッコイイ」「先進的」「スタイリッシュ」などがあげられます。

顧客がその商品やサービスに対して、プラスの感情を抱いて満足することが情緒的ベネフィットです。マーケティング戦略において、商品やサービスを購入した顧客の感情が高揚するように、また、購入後も高い充足感を得られるように仕掛ける必要があります。その結果、情緒的ベネフィットによって、自社のブランドへの安心感や顧客からの信頼へとつながっていくのです。

自己実現ベネフィット

自己実現ベネフィットとは、商品やサービスを購入して得る便益や自己実現のかたちを指します。例えば、自分らしくいられる、自分に自信が持てる、理想に近づけるなどです。

ナイキで具体的に例えると「八村塁選手のように世界に通用するプレイヤーになりたい」「大坂なおみ選手のようにかっこいい女性になりたい」などがあげられます。

顧客がその商品やサービスまたはブランドにふれることで自分自身の体験や実感で便益を得られるのが自己実現のベネフィットです。また、自己実現は、フィリップコトラー氏がマーケティング4.0にて現代マーケティングでのキーポイントは「ターゲットの考える自己実現を探ること」だと提言しています。現在のビジネスにおいて自己実現ベネフィットを設定することは重要だといえます。

社会的ベネフィット

社会的ベネフィットとは、人間は社会的動物として、他人に認められ、集団に帰属することを切望し、ブランドがどのようにして消費者と他者の関係性を改善するのかという社会的便益を指します。

例えば、「〇〇とのつながりを感じる」「○○とつながりたい」などです。ナイキで具体的に例えるとナイキの商品を身につけることで「ヒップホップの愛好家の一員である」「あのチームの一員になりたい」などがあげられます。

社会的ベネフィットでは、他者との関係性や、より理想的な存在として認知されるため人間の心理を理解する必要があります。

アーカーのベネフィット3分類とは

ベネフィットについて、ブランディングに強い、経営学者でマーケティング理論家のデイビット・A・アーカー氏は、ベネフィットを先ほどご紹介した4つではなく、「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」「自己表現ベネフィット」の3つに分類しました。アーカー氏は、これら3つの分類の中で機能的ベネフィットだけでなく、情緒的ベネフィット、自己表現ベネフィットを訴求することの重要性を語っています。

現在、ビジネスにおいて、機能的な面での競合他社との差別化は困難な状況です。そこで、情緒的ベネフィット、自己表現ベネフィットを訴求することで、商品やサービスの機能的な面だけではなく、購入後に得られる感情や生活の変化を、顧客にイメージしてもらうことが重要だといえます。

ベネフィットを感じさせるコアモチベーターとは

ベネフィットを設定する上で、参考になるのがスタンフォード大学の心理学教授のB.J. フォッグ氏の提唱する消費者式行動モデルです。その中でも「コアモチベーター」というモデルが活用できます。コアモチベーターとは、人間の行動原理を、感覚、期待、帰属という3つに分類したものです。コアモチベーターを理解し、ベネフィットの設定に役立てましょう。

感覚的モチベーター

感覚的モチベーターとは、生理的な欲求に基づく行動モデルです。その行動内容は、このブランドの商品やサービスを購入し使用することで快楽が得られる、または、苦痛が軽減されるなどです。

具体的には、衝動買いです。衝動買いの多くは、一時的な快楽を味わえ、ストレス解消するためにとる生理的欲求に基づく行動といえます。

情緒的ベネフィットで感じるのは安心感や充実感ですが、感覚的モチベーターではもっと深くに存在する顧客の欲求へ訴えることができます。そして、双方をうまく活用すれば、購買意欲への深層心理に働きかける設定ができます。

期待的モチベーター

期待的モチベーターとは、将来への改善欲求に基づく行動モデルです。その行動内容は、このブランドの商品やサービスを使用することで希望が持てる、恐怖を払拭できるなどです。

具体的には、移動時間を短縮するために自転車を購入する行動は、移動時間を短縮するという改善を自転車に求めています。このように消費者は現状、抱える問題を解決、改善するために商品を購入します。ゆえに消費者は、将来への希望や、恐怖や不安の払拭というベネフィットを購入しているのです。

帰属モチベーター

帰属モチベーターとは、承認欲求と疎外感回避という心理に基づく行動モデルです。社会的ベネフィットとほぼ同義です。その行動内容は、このブランドの商品を購入、所持することで、周りから認められるや仲間はずれにされないなどです。

具体的には、学生時代に子供がスマホを欲しがる行動です。周りの子どもたちが持っていれば、この欲求はさらに強くなります。承認欲求と疎外感の回避は、消費者行動のもっとも強力な動機になります。ベネフィットを定義するときは、社会的、帰属的側面を考慮すれば、より質の高い設定が可能になります。

まとめ

ベネフィットの理解と購買意欲を高めるための活用について、ポイントをまとめると以下のとおりです。

  • メリットは、商品やサービスそのものを意味し、ベネフィットは、商品やサービスそのものではなく、商品やサービスを通じて提供できる便益・恩恵という意味です。
  • ベネフィットを設定するときは、顧客の悩み・問題を抽出し、共感できるストーリーを組み立て、悩みや問題の解決方法をロジカルに提示することが重要です。
  • ベネフィットをマーケティングに生かすには、4種のベネフィットのそれぞれの特徴を理解し、顧客へアピールしなければいけない。
  • ベネフィットとコアモチベーションという概念を組み合わせて戦略を立てることでより具体的な施策につながる。

ベネフィットを正しく理解することで、企業目線ではなく顧客目線でのマーケティング活動や商品開発などができます。まずは、本記事の内容を参考に自社のブランドや商品、サービスにおけるベネフィットの確認をしてみてください。

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サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

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